第5章 二人でアオハル
あれから数日たった。
特段大きく変わったことはない。
変わったことといったら、悟さんが忙しい日が増えたと言うこと。
というより、私を隠したままお仕事サボるのが難しくなってきたんだと思う。
電話で怒られてるのを何度か聞いたし、(はいはーい。と簡単にあしらっていたが)
書類だって色々しているようだった。
「呪いを祓うお仕事と、学校のこともしてるんでしょ?」
時間があればこうやって私の部屋に来てソファで休憩をしている悟さんだったが、以前よりはその時間は減った。
「まぁね。」
「書類とか…何か手伝えたらいいんだけど。」
「んー?」
ぼーっと、ソファに寝っ転がって雑誌を見ている悟さんに私は言った。
いくらここが天国のように好き勝手できる場所だからと言って、横で一応彼氏が怪我をするような仕事をして、書類して、学校のことして…と、していたら、YouTube見ながら【推しカッケー!】とはできなかった。
んーっとしばらく考えたのち、悟さんは持っていた雑誌を私に渡してきた。
「なーに?」
「京都、行ったことある?」
「学生時代に、修学旅行で行っただけだけど。」
京都のガイドブックだ。
「今度さ、生徒たちが宿泊研修で京都に行くんだ。」
「へぇー楽しそう!」
「京都のどこに連れて行こうかと悩んでるんだけど、おすすめない?」
私は受けとったガイドブックを広げ、悟さんの横に座った。
「んー、やっぱり有名どころ入れた方がいいんじゃない?」
「清水、金閣、祇園。その辺?やっぱり生徒はソレが喜ぶかねー。」
「スケジュールも先生が考えるんだね。」
「研修と言えど、せっかくの旅行。生徒たちには青春してほしいじゃない。」
三人だけだけどね。
と、私の手にあるガイドブックを見てくる悟さんの顔は先生そのものだった。