第21章 もう一度貴方と(番外編3の3)
私は自分の部屋に向かって歩いていた。
荷物をまとめ、阿曽に帰るために。
勝手に私は宿儺を理解していると思ってた。
彼を心から救えるのは、一人じゃないと伝えられるのは私なんだと。
「馬鹿だなー。」
自分の傲慢さに呆れつつ、私は寮に向かった。
「?」
「傑さん。」
任務帰りなのか、傑さんが後ろからやってきて、私の横に来た。
「快気したと硝子から聞いたよ。」
「うん。傑さんも色々ありがとう。傑さんは任務帰り?お疲れ様。」
「……何かあった?」
「え?」
「なんかつらそうだから。」
笑顔のはずだったんだけど、どうやら傑さんにはバレてしまったらしい。
「なんか……自分が嫌いになりそう。」
「珍しいね。いつもなんとかなるって笑ってるのに。」
二人で寮に向かって歩きながら、私はぽつりと自分の気持ちを話した。
傑さんになら、話せた。
「千年前の阿曽巫女は、宿儺がきっと好きだった。」
「…うん。」
「言葉には一度も出さなかったの。宿儺に言ったこともないし、自覚をしたこともない。けど、きっと宿儺が好きだった。」
だから、記憶を封印してハクに託した。
「宿儺の気持ちを聞いたことはないの。私に対して暴言しか吐かないけど…、なんだかんだでそばに置いてくれてた。」
「宿儺の気持ちね。」
「宿儺が他の術師と戦う時、京の都を去ったの。」
「へぇ。」
「その時、私を置いて裏梅ちゃんだけを連れて行ったの。」
「…。」
「本当は私も連れて行って欲しかった。人から疎まれた彼に、私がいるんだと伝えたかったけれど、彼は私を突き放したの。」
千年前の情景が思い起こされ、私は静かに涙を流した。
「私の力なら彼を救えると。今はダメでも、封印をしていつかまた出会えたなら、私の浄化で彼を救いたいって。」