第21章 もう一度貴方と(番外編3の3)
「あは、すごいね。宿儺。そうやって話せるんだ。」
『こうやってお前の前で話すのは2度目だ、馬鹿』
そうなんだ…。ということは、普通に忘れちゃったか、記憶が消えてしまってるんだろう。
「虎杖くん、痛くないの?」
ほっぺをつんとつつくと、虎杖くんは首を振った。
「変な感じはするけど、痛いとかそういうのはない。」
「ふーん。」
『わかっただろう。これが今の俺だ。』
「…え?」
口の真上に小さな目が出てきて、細い目で私を睨むように見つめた。
『千年前とは違う。この小僧に受肉した俺だ。』
「……。」
「おい。宿儺、何が言いたいんだよ。」
キツイ声で虎杖くんが言ったが、宿儺は気にせず私を見つめた。
“ そうか、俺を封印するのは貴様か。しかしーーーー”
そうだ。
千年前のあの時宿儺は私を突き放した。
“そうか、俺を封印するのは貴様か。しかし、いつか封印は解ける。その時があってもまた同じように貴様は置いていく。何度でも置いていく。貴様は最初から最後までずっと俺の玩具だ。”
そうやって私を突き放した。
『いつか小僧の体を奪ってやるつもりだがな。』
くくっと笑う宿儺に、虎杖くんも笑った。
「何言ってんだよ。お前はずっと俺の中にいんの。もう一生な。」
『反吐が出る。』
憎まれ口を言い合いながらも、それは千年前の宿儺とは少し違った気がした。
「…そっか。虎杖くんとずっと一緒だもんね。」
『気持ち悪い言い方をするな、小娘め。』
千年前から、いつか私が宿儺の心を溶かして共に裏梅ちゃんと歩めたらと思っていたけれど…
もしかしたらもうそれはーーー…
にやにや笑う虎杖くんと、手の甲にいる宿儺の口に視線を向けた。
「違う道を歩んでいたのかもね…」
出会いや別れが選べたのならーーー…
「え?」
「ううん、なんでもない。」
私は虎杖くんに微笑んだ。
「さんの快気祝いで、今日ご飯でも行かない?」
野薔薇ちゃんが提案してくれたが、私は首を振った。
「今日は帰るね。また違う日に是非お願い。」