第21章 もう一度貴方と(番外編3の3)
「そんなに宿儺が好きってこと?」
流れた涙を五条さんは親指で拭いながら言った。
本当に泣くつもりなんてなかった。
五条さんにキスされたことが嫌ってわけでもないし、宿儺を思い出して泣いたわけでもない。
私は首を振った。
「…なんの涙か……私でもわからないんです。もしかして、記憶を失ったときの私の気持ち、なんでしょうか?」
五条さんと恋人だったときの私の気持ち。
阿曽巫女の記憶を戻した私の気持ち。
それらが私の中でせめぎ合って、ぐちゃぐちゃになってしまってるのかもしれない。
「抱きしめてもいい?」
私は五条さんの胸におでこを寄せた。
甘えるように。
トクトクと優しい鼓動が聞こえてきて、私はなぜかその音にひどく安心した。
五条さんは私を優しく抱きしめてくれて、私はソファに座ったまま五条さんの胸の中でそっと目を閉じた。
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「?」
ずしっと急に重く感じた五条は、の顔を覗き込んだ。
「…寝た。」
抱きしめての頭に頬を寄せていたが、まさかこの体勢のまま寝るとは五条も思わなかった。
最近またが寝れてない様子なのは五条も分かっていた。
つまらない映画でも見せて、あとでをまたゆっくり布団で寝かせてやろうかと思っていた五条だったが、まさか自分の胸に頬を寄せ、座ったままの体制で寝るとは…。
ソファに座っていた五条はをゆっくり横向きに抱き変えた。
少し口をぽかんと開け、安らかに眠るを腕に抱いたまま見下ろした。
「かんわいー。」
つんっと、の頬をつつく五条。
「僕のキスで泣いたのは、期待して良いってことかな。。」
五条はポツリ呟くと、まだ残るの涙の跡にそっと唇を落とした。