第21章 もう一度貴方と(番外編3の3)
少しうつむく私の顔を覗き込むように、五条さんは私に優しく触れるだけのキスをした。
「だ、だめです…五条さん…」
「なんで?」
もう一度、ちゅっと音を立てながらキスをしてくる五条さんの頬に手を添え、私はどんどん高鳴っていく心臓を落ち着かせたかった。
「…私まだ、五条さんのことちゃんと全部思い出せてない。」
五条さんは私の唇に3度目のキスをしようとして止まった。
「ーー…私五条さんを傷つけたり、してないですか?」
「……。」
なぜ忘れたのかと一度切ない声で言われた言葉。
それが頭から離れない。
五条さんは私にキスする寸前で止まって、微笑んだ。
「前も言ったように、僕はどんどんを好きになってる。」
間近で言われ、私は固まってしまった。
「記憶をなくす前、世界で1番を愛してるのは僕だと思ってたし、最上級に好きだと思ってた。でも、今それ以外に好きなんだ。」
「ーーー…っ」
肩に回っていた手に力が入り、私は彼の頬に手を伸ばした。
するりと柔らかい頬。
目隠しをしたその先の瞳を、少し見たいと思ってしまった。
「人の気持ちって不思議だね。上限がないみたい。」
「五条…さんーー…」
「が好きでたまらない。が宿儺を特別に思ってるのも知ってる。それでもいい。それでも僕はを手に入れたい。」
“宿儺”という言葉に私は反応してしまった。
宿儺は特別。
それはそうだ。
千年も昔からずっと気にかけてきた人。
『そうか、俺を封印するのは貴様か。しかしーーーー』
「ごめん、。泣かせるつもりはなかった。」
「ち、違うんです。この涙は……」
私は自分の目を押さえた。
勝手に流れてきた涙に自分でも驚いてしまった。
宿儺の最後の言葉が思い出せない。
封印する時、宿儺…なんて言ったんだっけーー…