第21章 もう一度貴方と(番外編3の3)
私が五条さんの腕に触れると、五条さんはピクリと動いた。
ただ何も言わず見つめ合う。
ーー…綺麗な瞳。
最初は少し怖いと思ったけれど、澄んでいて吸い込まれそうだった。
医務室の時計の音だけが耳に響いた。
いや。
私の心臓の音もすごくて、五条さんにまで届いてしまいそうだった。
少しずつ近づく五条さん。
たぶん、キスを拒否しないかどうか私の態度をうかがってるんだろう。
「…。」
小さく名前を呼ばれ、私は心臓が爆発しそうになって目を閉じた。
「……。」
ゆっくりと触れた唇は、軽く触れるとすぐに離れていった。
「〜〜〜〜っっ!」
声にもなってない唸りを出して、五条さんはベッドにいた私の足のあたりに顔を埋めた。
「あー、あー、もー。むーりー。」
ぶつぶつと言いながら布団から顔を上げない五条さんに、私はどうしたらいいのかわからなくて、おろおろとしてしまった。
「だから、のキス顔好きなんだって。」
「…っ!言わないでくださいっ。」
椅子に座り、ベッドの布団に顔を埋めていた五条さんは顔をこちらに向けた。
「感情が爆発しそう。」
「……。」
私は恥ずかしくて、五条さんから目を逸らした。
「。」
「はい…。」
「今度、デートしよっか。」
「デート…」
全然想像できなくて、オウム返しをしてしまった。
「今の僕、恋愛初心者の学生気分。触れるだけのキスで死ぬかと思ったもん。」
ーー…それは私もだ。
「ね。デートしよ。」
「……はぃ」
私がコクンと頷くと、五条さんは立ち上がり私の頭をポンっと撫でた。
「まぁ、まずは療養。ゆっくり休みな。」
そういうと、五条さんは医務室から出て、外の椅子で待っていてくれていた家入さんを呼んだ。
傑さんはもうすでにどこかに戻ったようだ。