第21章 もう一度貴方と(番外編3の3)
【side】
本当に私は彼の恋人だったのかと、何度だって疑うだろう。
それくらいに五条悟という男は雲の上の存在なのだ。
急にトップアイドルと恋人になれるだろうか。
急に皇族の方と恋人だと言われて信じれるだろうか。
私にとってそれくらい衝撃的で、受け入れられないことなのだ。
でもそれを理解したのは、千年前の記憶が戻って後のこと。
彼の術式がどんな凄いものなのか、六眼との合わせ持ちで生まれたことの奇跡がわかっているからだ。
きっと彼に恋をしていたころの私は、何も知らず、理解もせず、彼の人となりだけで好きになってしまったんだろう。
私はまだ、それを思い出せていないーー…
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「あの…五条さん?」
「んー?」
ベッドに座ったままの私は、五条さんのキスを拒否している体制のまま固まっていた。
手を五条さんの口元にもっていき、押し出している。
ーー…そう言えば、彼に触れられている。
確か五条さんの術式は絶対不可侵だったはず。
彼に近づくことも、触れることもできない最強の術式。
ーー…もしかして、信用されてる?
彼に触れることを許されているってことなのだろうか。
「あの…離れてください。」
「やっと言えたから、もう少しだけ。」
にぱっと笑う五条さんの顔が見れなくて、私は目を逸らした。
青い目が眩しくて私は見ることができなかった。
「……。」
私は五条さんの立場になって考えてみた。
“やっと”の意味を。
もし、恋人が自分だけ忘れていたら?
もし、目の前で死にかけていたら?
それが自分というのが照れくさいけれど、私の手のひらにキスをしようとしてる五条さんを、一方的に嫌だ嫌だと払いのけることが出来なかった。
私は押し返す手の力を弱め、手を下げた。
「?あ、ごめん。痛かった?まだちゃんと治ってないもんな。」
ーー…優しい。
私は五条さんの腕に手を伸ばした。