第21章 もう一度貴方と(番外編3の3)
綱手川さんからの電話を切り、私は家を出た。
ハクの背に乗り、依頼された土地へと向かった。
たまにくる簡単な依頼だった。
古戦場だったり、廃墟だったり、昔何かあった土地をたまに浄化していないと呪霊が大量に出てくるから、その前に私が行って浄化する。
ただそれだけ。
ただ、それだけだったはずなんだ。
イタイぃーー
イタイ…イタ…イ
「はっ…はぁ…!」
ハクのスピードでも逃げられない。
変色してしまった左手はもう機能していない。
痛くて痛くて気を失ってしまいそうなのを、私は必死でハクの背中にしがみついて逃げ回っていた。
周りから色んな声がした。
叫ぶ声。
泣く声。
痛がる声。
イタイぃぃぃーーー!
私は耳に響く声に耳を塞ぎたかった。
森の中を疾走するが、声が遠ざかることはない。
ドンっとハクが飛ばされ、私は森の土の上に転がり落ちてしまった。
左手を床についた瞬間、ポキっと折れる音がした。
骨が弱くなってしまったせいだ。
「ぐぅ…っ!いたっ…イタイっ…!」
特級特定疾病呪霊。
「なんで、こんなところにっ!」
誰かに知らせる暇もない。
逃げる余裕もない。
そもそも私は術師でもなんでもないから、体術とかそういったことは出来ないんだ。
ただ、浄化することしかできない。
それにここまで強い呪霊相手は浄化なんて一発で出来ることは不可能だ。
「…誘い……こまれたの?」
依頼してきたのは普通の人だと思ったけれど、私をここに誘い込んで特級特定疾病呪霊を放ったのだとしたら…。
ーー領域展開
何者かもわからない人でもない声が響いた。
「そ、そんな……無理、だよ。」
私はうっすらと涙を浮かべ、真っ暗になった視界の中で地面の土を握りしめた。