第21章 もう一度貴方と(番外編3の3)
「…?」
「はい。」
五条さんは、少し言葉に詰まりながらも、庭を見ながら小さく言った。
「なら…僕にしとく?」
「……え?」
「あー、ほら。たくさん話が来て大変でしょ?だからさ、噂には噂で対抗しようか。僕の婚約者って噂を流せば、もう君に声をかけてくるやつはいない。」
「恋人のふりをするってことですか?」
「んんっ。」
返事を濁しながら五条さんは私を見ようとはしなかった。
私なんかのために五条さんは犠牲になろうとしてくれてる。
私は首を振った。
「ダメです。そんなことしたら五条さんが困っちゃいますよ?」
「僕?」
「五条さんにお嫁さん来なくなっちゃいます。」
「……。」
五条さんは少し呆れた顔をして私を見た。
「そんなことまでしてもらうわけにはいきません。」
「まぁはきっと断るだろうなとは、思っていたけれど、本当に傑の言った通りのことを言うよね。」
「え?」
「なら僕を気にして断るって。僕は特に気にしなくていい。」
五条さんはお茶をお盆に戻し、私に少し近づいた。
「困ってるなら、助ける。それだけだよ。」
五条さんは私の髪の毛を一房掬いあげて微笑んだ。
「……っ。」
私はその優しい声に五条さんを直視できなくて、俯いてしまった。
「あ、ありがとうございます。考えて…おきます。」
「下心もあるしね。」
「えっ?」
驚いてまた顔を上げると、五条さんは今度はイタズラっぽく笑った。
そして、私の顔を見つめると眉を寄せた。