第21章 もう一度貴方と(番外編3の3)
私は驚いてブチっと電話を切った。
そして慌てて玄関を開けると、そこには五条さんが右手を上げて立っていた。
「えっ、あれ?近畿…?近所?」
「ははっ、近畿だよ。飛んできた。」
いつもの黒い上下に黒い目隠し。
前と変わらない笑顔。
あの切ない声で抱きしめてきた五条さんとは思えない、いつも通りの五条さんだった。
私は少しほっとして、玄関に招き入れた。
「お茶入れますね。どうぞ。」
背の高い五条さんにとって、古い平屋は天井が低く感じた。
お邪魔しまーすと、入っていく五条さんは迷うことなくリビングに向かっていた。
初めて庭で会った時、よく来ていたと言っていたけど、本当にここに来たことあるんだろう。
なんだか変な感じがした。
あの五条家の当主がこんな田舎の平屋に来てるなんて。
五条さんはリビングを抜け、縁側の方へと向かい、座って庭を眺めていた。
私はキッチンでお茶を用意しながら、チラチラとそちらに視線を向けた。
私の家に居座る呪霊たちのために呪力を最大限抑え、横に転がるちっこい呪霊を五条さんは嫌がることなく指先でつついていた。
呪術師最強が、呪いの力を持たないガワだけになった最弱の呪霊と戯れている。そんな様子をみて私は笑いながらお茶を乗せたお盆を五条さんの横に置いた。
「ここには術式で飛んできたんですか?」
「まぁね。」
私も五条さんと少し間をあけ、横に座った。
「任務で忙しくて遅くなってごめんね。なんか色々大変なことになってるんでしょ?」
「…えっと。」
大変なこと。
それはきっとここ数日のことだろう。
でも、なんで五条さんが謝るんだろうか。
「あの…総監部って?」
「あー、上の古臭い連中だよ。自分たちが呪術界を牛耳ってると思ってる。でも実際呪術規定を定めたり、色々な決定権を持ってるのも本当だ。」
「五条家の当主さんも総監部なんですか?」
「はは、違うよ。」
僕にそんな力はない。と、五条さんはお茶をすすった。