第21章 もう一度貴方と(番外編3の3)
こんな短時間で、私は二人の男性から交際を申し込まれたのか?
私は開いた口を慌てて閉じ、首を振った。
「あの…ごめんなさい。まだよくわかってなくて。」
「あー、大丈夫大丈夫。」
岩内と名乗った男性は、私に手を出したまま近寄ってきた。
大丈夫ってどういうこと?
「五条家に保護されていた君が、今はその手を離れ、総監部が浄化に目をつけたとなると、私みたいな家から色々声がかかると思う。」
「声が…かかる?」
「君を家に迎え入れようとね。そうすれば総監部の方々からも注目され、君は活動もしやすくなる。」
濁らせて話してはいるけれど、私と結婚したら、注目されて家の立場がよくなるからってこと?
私は眉を寄せ、男性から一歩引いた。
「私の家では嫌かい?」
「そうではなくて。」
「五条家に比べたら確かに小さい家柄ではあるけれど、呪術の家系は室町から続く、由緒ある家だよ?」
だから…そうじゃない。
「私以外の家からももう声がかかったのかい?」
「…。」
私は何も言わなかった。
だんだん怖くなってきて、私はハクに身を隠すように下がった。
「他の家からもきっと声がかかるだろう。その時よかったらうちの家のことも検討してくれると嬉しいよ。たまに怖い当主もいたりするからね、気をつけて。何かあればすぐ保護してあげるからね?」
にこにこ笑っているというのに、その笑顔が怖くて私はハクの背中に飛び乗った。
「ありがとうございます。また何かあれば岩内さんを思い出しますね?それじゃ。」
捲し立てるように早口でいうと、私は空に飛び上がった。
和装の服がばさっと風に靡くのを私は空から見下ろした。
手を振る岩内さん。
私のことなんか全然知らないのに、結婚しようとしているのか。
ただ、総監部というところが、私の力を認めるかもしれないというだけで。
私の力を認めたと言っても何か変わるわけではないというのに。
“いつか…私とーーー…”
“上層部の方々がーーー…”
“ーー…してください”
ハクに乗って飛んでいると頭の奥で何かーー…
何かをーー
「いた…っ」
私はあまりの頭の痛みに、ハクにしがみつき、背中に倒れ込んだ。