第20章 もう一度貴方と (番外編3の2)
神社でのお仕事の日、夜中に帰ってきた私は、疲れてそのまま寝てしまおうと思った。
そのつもりだった。
『なんで、忘れちゃうかな…バカ。』
肩のあたりで囁かれた五条さんの声が頭から離れなくて、私は布団の中に入っても眠れなかった。
五条さんはいつ会っても明るくて、忘れてしまった私を怒ることも思い出せとも言わず、また仲良くしようって前向きに言ってくれていた。
私はそれに甘えていたんだろうか。
あの言い方は、忘れたことを責めると言うより、忘れられたことが悲しいというような言い方だった。
お腹に回った大きく太い腕。
五条さんの体温と匂いがまだ残ってる気がした。
「本当に…なんで忘れたんだろ。」
お布団にもぐり、眠れない夜を過ごしながら、私は五条さんのことを思い出そうとした。
ーー…やっぱり思い出せない。
ぼやっと頭がして、そのあと急に痛くなる。
ズキズキして、なにも考えられなくなる。
『バカ。』
悪く言われてるのに、そう感じさせない優しい声。
縋るような切ない声。
「…眠れないよ。」
私は借りた小さな高専の寮の部屋で、ベッドに座り呟いた。