第2章 二人はずっと一緒
夏油さんいわれ、私はちっちっちっと、人差し指を振った。
「いきなり飛ばすと怪我しますからね!」
「…そうだね。」
「あ、これはなんですか?」
「チェストプレスだよ。座ってこのバーを押し出すんだ。大胸筋を鍛えるマシンだ。」
「胸を大きくするマシンですね!」
私はそのマシンに座り背もたれに背中をつけると、バーを思いっきり押し出した。
「んぎぎっ…!」
「…1ミリも動いてないよ?」
はぁ!はぁ!と汗をかいて呼吸を乱していると、夏油さんが苦笑しながらペットボトルの水を渡してくれた。
「はー!すごい運動した!」
「非術師は本当に弱いんだね。」
「鍛えてる人も居ますよー。私は初めてですけど…。」
「こんなに気合いとマシンが伴ってないところ、初めて見たよ。さんはとりあえず、筋トレマシンよりも有酸素運動を先にして基礎体力をつけた方がよさそうだね。」
「えへへ。私もそう思ってました。ちょっとかっこいいマシン使ってみたくて…。」
ベンチに座ってお水を飲んでいると、夏油さんが私の横に腰を下ろした。
「ね。」
「はい?」
「夏油さん。なんて堅苦しいからさ、下の名前で呼んでくれないかい?」
「…え?」
少し汗ばんでこめかみにひっついている私の髪の毛を、夏油さんはゆっくりと耳にかけてきた。
「。って呼んでもいい?」
「…っ!」
ふわっと微笑む夏油さんに私は目を逸らせなくなってしまった。
「ま、また!五条さんを揶揄おうとしてますね!」
「アイツは今任務中だろ?それに今ドキドキさせたって、運動してると悟も知ってるんだ。わからないさ。」
「…っ。」
顔が熱い。
夏油さんの雰囲気に、どうも私は弱いらしい。
きっと激しくドキドキしてるだろうけれど、五条さんの邪魔をしていないだろうか。
「?」
「はいっ!」
「私の下の名前は知ってるだろう?」
「す……すぐるさんです。」
「ん。」
いい子。とでも言うように傑さんは私の頭を撫でてきた。