第20章 もう一度貴方と (番外編3の2)
五条は組み手をし合う生徒三人を見つめていた。
中には虎杖がいる。
両面宿儺の受肉体、虎杖悠仁が。
「それにさ。」
五条の視線の先に気付いたのか、夏油も虎杖を見た。
「どうみても、。宿儺のこと好きでしょ。」
「……。それは。」
夏油は以前のの表情を思い出していた。
宿儺のことを思い出しながら話をするの顔を。
「千年前からまた宿儺に会うために、記憶を現代まで残そうとするくらい好きってことだろ。」
「……。」
夏油は何も言えなかった。
「それこそ、その思いが強すぎて僕への気持ちを打ち消すくらいに。」
「術式や呪いのせいでの記憶が消えたんじゃないのかい?」
「はさ、基本的に心で動くタイプなんだよ。」
夏油は五条の横に座った。
「心?」
「そっ。浄化もなんでも、心一つで強くなる。昨日もそうだった。は優しすぎるからね。」
「じゃあ、記憶が消えたのは…」
「阿曽巫女の宿儺への想いが強かったんだろ。記憶を戻した時に、僕と恋人だったら邪魔になる。無意識に僕との記憶を無かったことにしたんだ。」
夏油は眉を寄せ、との会話を思い出そうとした。
の家に行った時のことを。
「心ひとつで変わるのなら、の記憶はまだ消えてない。」
「…?」
夏油の言葉に、五条は視線を虎杖から外し、夏油に向けた。
「はあの時言ったんだ。“伝わってしまう”って。」
「“伝わる”?」
「あぁ。自分の胸を押さえてね。」
「胸……心臓?」
夏油は頷いた。
「は覚えてる。悟と心臓が繋がっていた時のことを。」
の心で変わるのなら、まだ思い出す希望があるはずだと、五条は再び伏黒の組み手をする虎杖に視線を向けた。