第20章 もう一度貴方と (番外編3の2)
「わぁお。何これ。の帳?」
私の後ろから声が聞こえて私は振り返った。
「五条さん。」
「この時間にすぐに駆けつけられるの僕だけだったからね。大丈夫?」
「はい。まだ私は中には入ってません。」
まさか、特級術師が来るとは思わなかった。
私は状況を説明しながら、昨日のことを思い出していた。
“悟さん”と登録されてあった五条さんの連絡先。
それだけならそこまで不思議ではないが、毎日のように電話をしあっていた履歴が私を動揺させた。
ーー…ただ仲良いだけで、夜中でも電話したりする?
「……。」
「?」
「あ、すみません。さっき高専に連絡したとおり、今にも特級並みの呪霊を生み出しそうでしたので、応援をお願いしました。」
「確かに溜め込んでるねー。んじゃ、ちゃちゃっと終わらせますか。」
ストレッチをして私が作った帳の中に入っていく五条さんの背中を見つめた。
2人で帳に入ると、ドロドロとしたオーラのような妖気のような、ドス黒いものが渦巻いていた。
「私がまず矢を中心に放ちます。おそらく浄化しきれません。残ったものが集まって呪霊となって,襲ってくるかと思いますので…」
「おっけー。後のことは任せて。」
「お願いします。」
本当なら五条さん1人で全部できるだろう。
ただこれは私が浄化することに意味がある。
神が人の想いを溜め込み呪いを生む。
五条さんがやれば神ごとすべて祓うことになる。
私は出来れば神だけでも浄化し残してあげたい。
ーー…人の話を聞いてあげる優しい神様だもの。
私は弓矢を持ち参道の石畳の上で靴を脱ぎ、本堂の方に向かって正座をした。
神に敬意をーー
想いに解放をーー
「…本当に巫女だね。」
ぽそっと後ろで五条さんが言ったのが聞こえてきた。
そうだ。
阿曽巫女の記憶を思い出した私は、以前よりも強く浄化の力を発揮でき、その浄化に呪力を纏わせることができるのだ。
立ち上がり一礼すると、私は本堂に向かって一条の光を放った。
「来ます。五条さん。お願いします!」