第20章 もう一度貴方と (番外編3の2)
高専にきて2日目の夜のことだった。
関東の神社からの依頼で、本堂にある御神体から何やら禍々しいオーラが出ているから見てほしいと言われたので、夕方から行っていたのだ。
神は人間のためのものではない。
神はすぐに怒るし、呪いにもなる。
しかし優しすぎる神は、今回のように人間の想いを溜め込みすぎる事がある。
今回はそんな神の浄化をしに来ていた。
呪いが生み出されたら術師の仕事だが、それを生み出す前に私が浄化すれば術師の負担は減る。
「ーーー…これは。」
私は神社に入る前に立ち止まり空を見上げた。
ドス黒い空気が神社全体に広がり、私の目では中が見えないほど澱んでいた。
私の手には負えない。
すぐに私はそう判断をし、携帯を取り出した。
こうしたことはたまにあった。
強い呪霊や、怨霊がいた場合、私1人では危険なため高専に連絡をいれ、応援をお願いしていた。
高専と協力関係であっても、私は高専に所属しているわけではない。補助監督さんはいない。
いつもなら後日高専の呪術師に来てもらうが、今回はそうもいかない。
「これは、一刻も早く祓った方がいい。」
私は神社の敷地の外から呟いた。
関東の海沿いにある大きな神社。
高専に連絡を入れ終えた私は、少し離れた場所に待機した。
私が無駄に入って刺激を与えるより、外で待っていたほうがいいだらう。
神社の方から人間の黒い憎しみのこもった声が聞こえてきそうだった。
今にも神社から出てきてしまいそうな澱みに、私は帳を、下ろす判断した。
帳に私の浄化の力を少し織り交ぜ、帳を下ろす詠唱をとなえた。
【陽より出でて陽よりも白く、その穢れに清き光りを】
巫女をしていた時によく使っていた私独自の帳だ。
この帳に触れた穢れは浄化される。