第20章 もう一度貴方と (番外編3の2)
私は任務や学長との話もあり、一週間は高専に滞在予定だ。
先程、先日失礼をしてしまった五条さんにも挨拶を終えたし、学長との話も終わったので、高専の寮に向かっていた。
寮の一部屋を借りて約一週間過ごさせてもらうのだ。
「岡山がもっと近かったらいいのに。」
寮の部屋で荷物を整理しながら私はぼやいた。
「あ、後で野薔薇ちゃんと夜ご飯いけるか聞いてみよー。」
と、私は携帯を取り出した。
ベッドに座って携帯の連絡先をみていると、ふと先程のやりとりを思い出した。
「…そうだ。五条さん。」
連絡先はもう交換済みだと言っていた。私は覚えてはいないのだけど、もしかしたら本当にあるかもしれない。
私は連絡先の名前をあいうえお順で上から見ていった。
「ご…ご……んー?ないじゃん。」
“五条”のいう名前は登録されていなかった。
「もしかして、記憶なくなってこういう連絡先とかもなくなった……なんてことはないよね。流石に。」
ご飯を一緒に行ったこともあると言っていた。
にわかに信じがたいが、本当に私は昔五条さんとご飯に行ったことがあるのだろうか。
ーー…目隠しをして不思議な雰囲気の人。
「あ、履歴。」
ご飯を言ったことがあるなら履歴に残っているかもしれないと、私は着信履歴を表示した。
「……“悟さん”?」
たまに野薔薇ちゃんや傑さんなど違う人はあったけれど、ほとんどがその名前で埋め尽くされていた。
記憶がおかしくなる少し前まで、ほとんどその名前…。
「…?」
こんなに電話をした覚えがない。
記憶が消えてる。
「悟…さとる?ーーー…五条…悟?え?」
私は携帯の画面を見続けた。
“悟さん”とは、まさかあの五条悟のことなのだろうか。
「そんな下の名前で呼ぶくらい、仲が良かった…?」
私は何か思い出せないかと、彼の名前を頭の中で呼び続けた。
ーー…悟さん。悟さん。
「傑さんだって下の名前じゃない。」
ズキズキする頭を押さえながら、私は思い出したように呟いた。
そうだ。きっとそう。
傑さんも下の名前で呼んでるし、五条さんは私を“”と呼んでいた。
そのくらい親しかったんだ…。
「…なんで、あの人だけ忘れちゃってるんだろう。」