第20章 もう一度貴方と (番外編3の2)
頭をぺこっと下げながら笑顔で去っていくに手を振り、野薔薇は五条を睨みつけた。
「何あれ!?」
「んー?なんか僕のことだけ忘れちゃったみたいなんだよ。」
「なんでそんなっ!!」
野薔薇は拳をつくり、ぐっと歯を食いしばんだ。
なんでそんなに平気そうなんだと、五条に言いたいのを野薔薇は我慢した。
(先生だって平気なわけがない。)
「釘崎…。」
虎杖は震えて泣くのを我慢してる釘崎の肩に手を置いた。
「ーー…さん先生のこと好きじゃなくなったんか?」
虎杖の問いかけに五条は頷いた。
京都の研修旅行で楽しそうにゲームをしたり、京都の夜で二人で歩いてるのを見たし、が危ない時は五条家の当主として動き救い出したことも。
三人は間近で全部見てきた。
無下限があるはずなのに、からはよく触れ、五条がなにかふざけるとが叩いて怒ったりもしていた。
五条が“触れさせる”ことを唯一許していた人。
全部全部、三人は見てきたのだ。
「なになに。何暗い顔してんの。オマエらのことは忘れたわけじゃないんだから、今までのと変わんないよ?」
五条は変わらずずっと明るい声で言った。
野薔薇はその明るい声にも苛立ちを覚えた。
五条が悲しむ姿を見たいわけでもないし、先生の弱ってるところなんて見たこともないが、から元気のようなその姿にどうしようもなくもどかしく思えた。
「どうするんすか。先生。まさか何かの術式か呪い?」
「いやそれはない。遠くからこの目で何度も見た。何度もね。でも何もない。本当に忘れてるんだ。」
伏黒の問いに五条は首を振って答えた。
「だーいじょーぶ!嫌われたり憎まれてるわけじゃないんだから、また初めからやり直すだけだよ。」
「初めからって…」
虎杖は心配そうに五条を見た。
「初めからだよ。惚れた女がもう一度恋に落ちる瞬間を見れるんだ。最高じゃない。」
五条のその言葉に、三人は顔を見合わせぷっと笑い合った。