第18章 番外編 2
《ハッピーハッピーメリークリスマーーース!!!》
一年後、私は再び子鹿ちゃんを膝に乗せ、縁側に座っていた。
去年とは違って、今年は曇ってる。
「やっと声聞けた、悟さん。…メリークリスマス。」
私も子鹿にむかってそう呟いた。
《流石にもう泣いてないよね?大丈夫ー?ちゃんと僕の顔覚えてる?》
「…覚えてるよ。ふふ」
ふざけたような声に、私は悟さんの表情を勝手に思い浮かべながら想像した。
《…流石にまだ恋人出来てないよね?え?出来た?出来た?まだ一年だよ?それは僕怒っちゃうかもなー。いやでも、が寂しいなら恋人の一人や二人いても……許すかも…いや…うーーん。》
「ふふっ出来ないよ。どっちなの。」
寂しいよ。まだ寂しい。
人生の中で貴方と一緒にいた時間はそんなに長くはない。
でも、もう私は貴方は私にとって特別で、いまだに涙を流す日々だった。
《“五条悟”と“両面宿儺”っていう術師がいなくなって、きっと世界は少し穏やかになったんじゃないかな。もちろん呪霊はいるだろうけど、強いやつは減ったんじゃないかと思ってる。》
確かに、たまに私の様子を見に来てくれる虎杖くんがそんな事を言っていた。
《……。》
すこし間があいて、悟さんが優しく私に声をかけた。
《僕からのお願いは一つだけ。幸せになって。僕がそばにいられないのが………》
少し言葉に詰まる悟さんに、私はまた涙が溢れてきたけど、去年ほど泣き喚いたりしない。
《……ごめん。言葉が見つからないや。》
「悟さん…。」
《がいつも言ってたでしょ?悩みはするけど絶望したりしないって。結構好きなんだよ、あの言葉。》
でも…私は今ずっとーーー…
《新しい推しでも作ってさ、美味しいもの食べて、小さいことでもいいから幸せを感じて欲しい。》
推しなんて、あの日以来見ていない。
「…ばか。ホントばか。貴方がいないと…まだ幸せを感じられないよ。」
寂しいーー…
会いたいーー…
《よし!次はまた来年のクリスマスイブね!それまで元気でね。ばいばーい!》
明るい声。
きっと録ってるときも笑顔なんだろう。