第18章 番外編 2
夜の間に帰る悟さんは、服を着て庭にいた。
私も服を着込み、縁側から靴を履いて彼の後ろに立った。
「さっ。行こうかな。」
「ーー…うん。」
「に元気貰ったし、ささっと宿儺倒してまた帰ってくるから。」
「…うんっ。」
「、忘れないで。幸せになるってこと。」
私はうつむいた。
「一人は寂しいからさ、誰かといて。それは僕じゃなくてもいい。」
戦いに行く彼を見送るのだから頷かなきゃ…。
彼を安心させるために、嘘でも頷いて幸せになるよって言わなきゃ…。
「…うん。私、幸せになるよ。一人にならない。悟さんに何かあっても絶望したりしない。」
初めての私の貴方への嘘。
心臓が繋がっていたらバレただろうかーー…
「……ホント、は嘘がつけないな。」
「え?」
小さな声で私は聞き取れなかったけど、悟さんは優しく微笑んだ。
うっすらと日が昇り始めた。
「これ。あげる。」
「何これ。…鹿?」
手渡されたぬいぐるみ。
眠ったような顔に、ちょっと間抜けな感じ。
「子鹿だよ。みたいだろ?」
「なにそれ。」
ふふっと笑って私は鹿のぬいぐるみを見つめた。
「亡くなった夜蛾学長が作ったんだ。みたいだったから貰って部屋に飾ってた。ぷるぷる震える生まれたての小鹿思い出して、それ見てよく笑ってた。」
「……もう。」
「持ってて。大事に。」
「わかった。」
私は自分にそっくりと言われた子鹿ちゃんを抱きしめた。
「よしっ!いくかー!」
ぐっと伸びをして、悟さんは空を見上げた。
「の世界。守ってみせる。この場所を奪わせない。」
「ありがとう。」
「いってらっしゃいーーー…悟さん。」