第15章 二人の未来
「あー、祓えないのストレス。おーい!ーー!反応しろー!」
悟さんは髪の毛の攻撃を避けながら、叫んだが、私は動かなかった。
私が、動けたら…!
私が、話せたら…!
【おにいーーちゃーーーん】
長髪呪霊が甲高い声で叫んだ。
…お兄ちゃん?
そういえば、長髪呪霊は、“みんなで一つ”といっていた。
二人で一つではなく。
もしかして、まだいるのだろうか。
地鳴りのような音が響き、悟さんは地面を見た。
「傑!下だ!」
「…っ!」
大きな岩のような手が出てきて、傑さんを持ち上げた。
捕まえていたもどきがその隙に抜け出し、地面を転がった。
「はははっ!」
私の笑い声が響く。
その様子を見ていたら、足に違和感があった。
カリカリカリ
と、小さな音がする。
目だけを下に向けると、小さなハムスターくらいの呪霊たちが私を操っている髪の毛を噛み切っていた。
ーーー…貴方たち。私がわかるの?
カリカリカリカリ
身体中に巻き付いていた細く透明な髪の毛を、すべて噛み切ってくれた。
「う…動ける。ありがとう。」
私は手を伸ばし、虫のようなハムスターのような、呪霊たちを撫でた。
キュイっ
後ろから声が聞こえてそちらを見ると、大きくて一度しか使わなく、グラウンドに置いていった弓があった。
「…でも、体は呪霊だよ?」
いくら中身は私でも、浄化はできないはずだ。
だって、浄化は血によるものだって言っていたーー…。
キュイキュイっ
お兄ちゃんと呼ばれた地面から出てきたでかい呪霊が暴れてるのか、ドォンと音が響いている。
中身が入れ替わったと呪霊は、私を乗っ取っても浄化はできていなかった。
この小さな呪霊たちは、入れ替わっても私だと認識してくれた。
私は浄化する時いつも祈ってたーー
「心でも浄化できる?」
私は弓に手を伸ばし手に取ると、立ち上がり私の身体に視線を向けた。