第15章 二人の未来
私は走った。
たった6歳の体で。
ただ、息切れは元の私の体よりも軽くかったのが少しショックだった。
ーー…体力は元の私より子供の方があるのか!
今心臓を刺され、また体の中身を戻されたら私も悟さんも死んでしまう。
だから今は、少しでも離れておきたかった。
校舎の2階まで来た。
どこか隠れたってきっと呪力でバレるはずだ。
私はそれを抑える方法を知らない。
ふと、校舎の窓から外を見た。
「…悟さんっ!」
来てくれてる!
ちゃんと来てくれていた!
私は窓ガラスに張り付いて下にいる、悟さんと“もどき”を見下ろした。
悟さんはもどきの首を絞め、持ち上げていた。
「さ、悟さん、中身が入れ替わってること気付いてくれたんだ…!」
ただーー…悟さん。それ、私の体…。
悟さんは見た目も入れ替わったと思ったのか、容赦なく私の首を絞めぶら下げていた。
私は窓を開け、彼を呼ぼうとした。
【だぁーーめぇー】
真後ろで声がした。
「ひっ!」
振り返ると、長い髪の毛が視界を覆っていた。
そうだ。もう一体いたんだーー…!
身体が4メートル近くあって、腰を曲げズルズルと歩く女みたいな呪霊が…。
髪の毛が全身にまとわりつき、ふわりと体が浮いた。
「いったい誰が私を狙ってたやつなのよ!」
狙っていた特級は一体だけだと思い込んでいたけど、もしかして二体いたのだろうか。
【みーんなで、ひとつー】
にちゃあーっと髪の毛の隙間から見えた大きな口が弧を描いた。
みんなで一つ?
分裂しただけで、もともとは一つの呪霊なのだろうか。
【みーんなで、お前の身体たべるぅー】
【おとーとのところもどろぉねー】
髪の毛がピンと私の手首や足首に一本絡まり、私は地に降ろされた。
が、体が自由に動かない。
ーー…声も出ない。
どうやら私は自由を奪われ、操られたようだ。