第15章 二人の未来
私たちは高専の門の前に来ていた。
「武器持った?」
「うん。」
「靴紐大丈夫?」
「…うん。」
「ハンカチちり紙は?」
「ねぇ、大丈夫だから、さとるママ。なにちり紙って。使ってる人初めて聞いたよ。」
悟さんは目隠しをしたまま、私の両肩を掴み心配そうにため息をついた。
今日は悟さんと離れてみる日だ。
私を食べるため、私が子供の頃から私を狙い続けてきた呪霊を誘き出すために。
武器というのは、モデルガンのことだ。
本当に軽いおもちゃ。
指で銃の形にする方が早くはあるけれど、実際に銃を撃つふりをした方がここ数日の練習で威力が強いことに気づいたのだ。
「悟。」
「わかってるよ。」
悟さんは、傑さんの呆れた声に私の肩から手を離した。
「いいな、。もう一度確認しておく。」
「うん。」
「僕は高専を中心に一度行った方ある、あらかじめ座標を決めた場所にしか高速移動は出来ない。」
「うん。」
「絶対、ぜーーーーったい、遠くに勝手に行かないこと!!いいね!」
「わかった。」
今日行くのは東京のもっと西の山の方。
周りに人がいない、廃校になった場所。
「昨日の打ち合わせ通り、常に浄化し続けろ。」
「うん。」
私は目を閉じた。
いつもはなるべく隠れるために浄化の力は抑えていた。
勝手に呪霊たちを浄化するのも嫌だった。
それを今、自分の体の周りにだけ幕を張る感じで浄化の力をまとわせた。
「これで、来てくれるかな…。」
「あからさますぎて、罠だとバレるかもしれないが、長年狙ってたが浄化の力を撒き散らしながら一人で歩いてたら、喉が出るほど欲しいはずだ。」
こぐりと喉を鳴らした。
「何かあれば、すぐ体のどこかに合図を出すね。」
「何もなくても何か違和感あればすぐだ。」
「うん、わかった。」
「私は数キロ離れた場所ですぐ駆けつけられるよう待機しているよ。」
「うん、傑さんもよろしくお願いします。」
「あー、走るのもとろいし、体術も出来ないのに、こうすることしか出来ないのがもどかしい…!…修行してからにしない?」
「もう、手遅れだよ。とりあえず今日頑張ってみる。心配してくれてありがとう。」
悟さんの頬に手を伸ばし、ふわっと撫でると悟さんは私のその手を握った。