第12章 二人は
悟さんはベッド横にあるティッシュで私の顔を拭いてくれた。
「…悟さんが私の前でだけ余裕がないのが、優越感なの。」
「…。」
「私の手で顔を歪めてくれるのが、たまらなくドキドキするの。」
「…歪めるって。」
いまだ膝の間にいた私は、困ったように言う悟さんの太ももにそっと手と頬を寄せた。
「最強が最弱に弄ばされてるのがゾクゾクしちゃう。」
くすくす笑って私は悟さんを見上げた。
「ごめんね、意地悪で。」
私がそういうと、悟さんは私の頭を優しく撫でてくれた。
「確かに僕はに負けるかもな。今回…意図せず出させられたし。」
むっと話す悟さん。
「早漏じゃないからね。」
「…そ?はやかったよ?」
「くっそ!」
私を抱き上げて抱きしめようとしてくれたけど、私は首を振ってそれを拒否した。
「シャワー浴びたい。血と汗と…顔まだベタベタする…から。」
顔にかけられたのは初めてだった。あんまり言いたくないけど、洗いたい。
「俺の部屋の入っていいよ。」
「悟さんの部屋にも浴室あるんだ…。」
私の部屋にもあるのに…。
と、五条家のお屋敷の凄さに驚きつつ私はまた首を振った。
「着替えも私の部屋にあるから、隣だし戻るよ。」
「僕の着ればいいのに。…うん!待って!」
急に声を大きくしていうから、私は驚いた。
「うん!そうしよう!僕の着てよ!大きめのシャツ!憧れ!」
急なテンションの高さに私は笑った。
まるで子供だ。
「悟さんの大きめのシャツならワンピースになっちゃうよ。」
「最高じゃん。」
悟さんはたちあがり、いそいそとシャワー室の準備をして、白いシャツを私に投げてよこした。
「いいけど…じゃあ、悟さん私の部屋から下着……持ってきてくれる?」
「はい、喜んで!!」
いい返事に私は笑った。
「着物…どうしよう。」
「捨てるからいいよ。」
「え、捨てちゃうの?」
「穴開いてるし要らないでしょ。」
帯とか上等なものだろうに…、と思いながらも、あの多治の家のものならいいかと思ってしまった。