第11章 二人の絆
「どこに捕まったのかもいわない!」
「だって!外部と連絡とったら殺すって言われたから!」
「結婚話にのるし!」
「だって!結婚じゃなくて養子にしてやるって最初は言われたから!」
「なんだ!養子って!必要ないでしょ!」
「だって!五条家に浄化の血を混ぜるなって言われたんだもん!でも養子になって近くで支えるならいいって!」
「誰に!!」
「…悟さんのお母様。」
「…は?」
悟さんは力が抜けたように口を開けた。
「悟さんのお母様に言われたら、私…」
「いや、誰。うちの母親はもう海外でエンジョイ決め込んでるけど。」
「え?でも、私ちゃんと挨拶したよ。お世話になってますって。」
「僕の母親じゃない。そこから騙されてたんだよ。」
ええー!と私は叫んだ。
私はがっくりと力が抜けた。
ずっとお母様だと思い込んでいた。
好きな人の母親と言われたら、みんな信じ込むに決まってる。
しゅんと落ち込んでいると、悟さんはぎゅっと抱きしめてくれた。
せっかくの白い着物が私の血で汚れていく。
「なんで、自分を刺したんだよ。どうとでもやりようはあったろ。」
私は悟さんから少し離れて悟さんの顔を見た。
「その顔ーー…。」
「…?」
「その辛そうな顔を、あの啓明に見せたくなかった。その顔にさせるのは私だけがいい。」
「……まったく。」
最初に言われた“まったく”とは、全然違うトーンで、優しく抱きしめてくれた。
「悟。」
悟さんの後ろから傑さんの声がして、私は慌てた。
つい話し込んでしまった。
「まずは終わらせよう。」
「あぁ、そうだな。憲紀も待たせて悪いね。」
「いえ、かまいません。」
傑さんの横には憲紀と呼ばれた男性…というか、青年が一人。
虎杖くんたちとあまり年齢は変わらなそうな人だ。
先程口上を述べた老人が再び悟さんの前にやってきて、紙を広げた。
「この度、定められた者以外の手によって、多治啓明は落とされましたが、直前に五条悟様によって試合終了の合図がなされておりましたので、試合は有効。勝者は五条家側、虎杖悠仁といたします。」