第11章 二人の絆
がふっと口の中に血の味がする。
私は目の前の啓明をみた。
啓明もまた、口から血を出していた。
あの3匹の呪霊が言っていた。
“呪いを一度だけ移動してくれる”と。
だから、私は心臓のつながりを一度だけ悟さんから啓明に変えたのだ。
啓明は自分の心臓を押さえ、膝から崩れ落ち、そのまま倒れた。
「はっ…は…」
宿儺の向こうから悟さんが走って来てるのが見えた。
信じて見てくれてた。
痛い…痛い…頭が冷たく、もう足の感覚はない。
血を吐きながら、私は宿儺を見上げた。
『たったあれだけの血で助けてくれ?調子に乗るなよ小娘。』
くっと笑う宿儺は私の胸ぐらを掴み浮き上がらせた。
胸や口から血が流れ、私は視界がぼやけてきた。
『あの術師は自分には反転術式を使えてもこれほどの傷は他人には使えん。しかし俺なら出来る。それを聞いて覚えていたのだな、小娘。』
「…けほっ……」
『これから先ずっとだ。』
胸ぐらを掴む力が強くなった。
『俺が飽きるまで付き合ってもらうぞ。小娘。それが条件…契約だ。いいな。』
私はうつろになりながらもら小さく頷いた。
宿儺は腕を引き寄せると、私に口付け、口の中にある血を吸い取るように舌でかっさらって行った。
ドクンと一度高鳴る心臓。身体中が熱い。
ドサっと床に捨てられた私は自分の胸を見た。
「傷…塞がってる。」
宿儺は私を見下ろし、自分の口元についた私の血を拭っていた。
「恵。鵺(ぬえ)で多治を硝子のところにまで運んでくれ」
「はい。」
悟さんがやってきて、伏黒くんに指示を出している。
伏黒くんは大きな鳥を出すと、啓明と共に空高く飛んでいった。
きっと治療を施してくれるのだろう。
『小娘。契約を忘れるな。』
「その時は僕も隣にいていいかな。」
近くに来た悟さんが宿儺に向かっていった。
『ならぬ。野暮な事をするなガキが。』
悟さんを“ガキ”呼ばわりすることに私は驚いた。
「しかしを助けてくれるなんてね。人の心があったりする?」
『……。』
明らかに怒ってる。