第11章 二人の絆
もうボコボコだ。
私から見ても実力差は分かりきってた。
鏡のような結界は全て壊され、呪力をほぼ使ったのか肩で息をして座り込んでいる啓明。
悔しそうに床を殴っている。
私は悟さんを見上げた。
悟さんも椅子からまた立ち上がると、右手を虎杖くんの方に向けた。
ーー…虎杖くんの勝ちだ。
「五条…さとる…く…そが……」
焦点が合ってない。
やっぱりこの男は仕掛けてくる。
負けたところで、こいつは私の心臓を狙ってくる。
ただ悟さんを苦しめたい、それだけのために。
私は虎杖くんに向かって叫んだ。
「虎杖くん!!!《お願い!!》」
「応!!」
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『ひとつだけお願いがあるの!』
試合開始前に、私が虎杖くんに伝えた事があった。
『私が《お願い》と唱えたら、宿儺に5分間だけ主導権を渡してほしいの。できる?』
『宿儺が拒否しなければできるとは思うけど…。でもいいのか?』
『暴れさせない。悟さんもいるし。』
『あ、そっか。先生いるから制御してくれるか。わかった。《お願い》ってさんが言ったら5分宿儺に変わるよ。』
『ありがとう!』
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虎杖くんがかくっと力が抜け、段々と顔の模様が出て来ていたが、それよりも早く啓明が私に向かって走っていた。
観客席では皆が立ち上がり、啓明を止めようと走り出していた。
私は悟さんに視線を送り、左手の文字を撫でた。
ーー…お願い、信じて。悟さん。
「啓明。貴方の手で最強の五条悟を苦しめるなんて出来っこない。させるわけにもいかない。」
私は背中に隠しておいた、ナイフを取り出した。
夜、残すくらい大量のステーキを用意させたのもこのため。
私はぎゅっとナイフを握りしめた。
「最強に勝てるのは最弱の私だけなの!!譲らない!」
私はナイフをそのまま自分の心臓に向かって振り上げた。
「宿儺っ!この前の契約をここで使うから!私…を!助けて…!」
私は啓明の腕を眼前に、自分でナイフを心臓に刺したのだ。