第11章 二人の絆
「ううん、私じゃないよ。」
私は聞こえないようこそっと虎杖くんと話をした。
啓明は少し離れたところで座り、イライラした様子で爪を噛んでいる。
「あの人と戦うの。」
「ふーん。なんで急にこんな事すんのかな。」
「お稽古だよ。頑張ってね。」
どうやら悟さんは虎杖くんには事情は話していないらしい。
なら私も話す気はない。
虎杖くんが勝たないと五条さんは知らない人と結婚しなきゃだし、私はこの爪を噛んでる啓明と結婚しなきゃいけない。
そんなことを虎杖くんに話すと余計なプレッシャーを与えてしまう。
「おいっ、近くにいろ!」
「なんだ、偉そうだなアイツ。」
啓明に言われ私はため息をつきながら、虎杖くんから離れようとしたが、虎杖くんが私の腕を掴んだ。
「さん、大丈夫?」
何か勘付いたのかもしれない。
私は首を振った。
「何もないよ。近くで見学してるね。…あっ!虎杖くん!」
私は力が少し弱まった啓明の腕を振り払い、虎杖くんに駆け寄った。
「ひとつだけお願いがあるの!」
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「何を話してた。」
私は再び啓明に腕を掴まれ、歩かされていた。
「別に。勝っても負けてもまた会って話をしようねって言ってただけ。」
「…くそっ。気に入らん!」
イライラはずっとしているらしい。
私は彼を無視して横を歩いた。
「ほらいくぞ。お前も闘技場内に入れ。離れるなよ。」
ぐいぐい引っ張られ、私は建物からでて太陽の下にきた。
だだっ広い石畳の闘技場だ。
周りを観客席が囲ってはいるが、誰もいない。
いや…いちばん手前に二人。
伏黒くんと野薔薇ちゃんだ。
虎杖くんを応援しに来たのだろう。
「それではしきたりに則って、御前試合を始めます。」
私たちの前に和服を着た老人が立っていた。