第11章 二人の絆
髪の毛を離され、私は畳に座り込んだ。
ーー…もし心臓を貫かれたら。
悟さんは自分で治せるけど、私は治せない。
「明日の御前試合は俺が試合に出てやるよ。」
ふっと笑う啓明に、私は膝をついて下を見ることしかできなかった。
ーー…啓明が出るってとは、負けそうになったら私の心臓を貫くってことだ。
ただ、五条悟の歪んだ顔を見る。そのためだけに。
笑いながら部屋から出ていく啓明に私はぐっと両手を握りしめた。
「…絶望なんかしない。」
『そんなことするくらいなら、美味しいもの食べて推しでも見るかな』
いつもなら笑ってやるのに、どうしても笑えない。
何もできない自分が悔しくてたまらなかった。
「…悟さん。私どうしたらいい?」
ピッ
部屋の隅から音が聞こえた。
笛のような、何か高い音。
私がそちらに視線を向けると、ふわふわとしたナニカがそこにいた。
「呪霊…?」
でもここは結界内。入ってこれるのだろうか。
あまりに小さいとか、誰かについて来たとか、そういったことだろうか。
「おいで。」
私は手を伸ばした。
出て来たのは3匹。それぞれ白と黒と茶色のふわふわとした呪霊だった。
「3匹でひとセットなのかな。ふふ、かわいーね。」
目が一つだったり、小さいくせに爪だけは大きかったりするのに、なんだか可愛く見えた。
私の膝あたりにくると、クルクル回ったりしている。
私は指先でつんっとつついて遊んであげた。
《きれーに…もどれた…》
「へっ!?」
耳に何かが聞こえて私は自分の耳を押さえた。
《ありがと……》
私は膝にいる呪霊をみた。
3匹ともこちらを見ている。
「あなた達が話しかけてるの?」
私がそう言うと、膝の上でぴょんっと跳ねた。