第11章 二人の絆
私は座り直し、乱れた着物や髪の毛をなおし、上等な着物の袖で口元を拭った。
ーー…気持ち悪い。
また涙が出そうになるのを私は必死で我慢した。
「…くそがっ!!!」
部屋の入り口で文を読んでいた啓明は、用紙を畳に叩きつけた。
「五条ぉ悟めぇーー!」
彼の名前が出て私は顔をそちらに向けた。
「御前試合だと!!しかも御三家当主全員に通達しやがって!こんなの…くそっ!!!無視できる訳ねぇじゃねぇか!!」
啓明は私を睨みつけた。
「御前試合が終わるまで手が出せなくなった…くそっくそ!!」
床に投げつけた手紙を啓明は何度も踏みつけた。
悟さんが何か手を回してくれたに違いない。
私は胸が熱くなった。
「あいつはどこまで行ってもくそぼんぼんのお坊ちゃんだったな。権力を余すことなく使いやがって。だから気に食わねぇんだ。」
「五条悟さんは、責務を全うしています。権力を使うほどのことをしています。」
私は立ち上がり、啓明に向き合った。
朝早くから任務に向かい、当主としての会議、学校にいき子供達を育て、また任務。遅くまで書類をしていることもあった。
最強だからと、周りからのプレッシャーや期待もあっただろう。
自分の時間なんてほとんどない。
私は啓明を睨みつけた。
「なんだその目は…!」
ずかずかと私の前までやってして、私の髪の毛を鷲掴みにし、振り回した。
「…っ。悟さんはすごい人なんです!あなたなんか…あなたなんか…!」
私は耐え、彼から目を離さなかったが、啓明はニヤリと笑った。
「明日の御前試合。手が滑ってお前の心臓を貫くかもなぁー。五条悟は反転術式で助かるかもしれないが、お前はどうだ?目の前でお前が倒れたらいい顔するかもなぁ。」
私は目を見開き、ひゅっと息を吸った。