第11章 二人の絆
悟さんや傑さんが、呪術界に嘆いていたのがよくわかった。
力がある悟さんは今まで苦労して来たんだろうな…。
いつも明るく笑う悟さんを思い出しながら、私はもう一度手の文字を撫でた。
「…痛いなーもう。」
座って自分の腕に“ばか”と書く悟さんの姿を思い浮かべると私は笑みが出た。
「お返ししとこ。これなら別にバレても大丈夫でしょ。」
私はペンを取り出すと“ばかばかばかばかばか”とゆっくり自分の腕に書いた。
「ひー、いったいなー!」
自傷行為がこんなに痛いなんて。
出来ればこれで最後にしたい。
「あんな男と結婚なんてやだなー。早く助けてよー、悟さーん。」
無力な私は、結局悟さん頼みだ。
私は自分の不甲斐なさに嘆きつつ、自分の腕の“ばか”という文字にそっと口付けた。
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次の日、女中さんに手伝ってもらいながら私はまた着物に着替えさせられ、部屋に閉じこもっていた。
スマホも無ければ、テレビもネットもない。
本も与えられず、私はひたすら窓の外を見て過ごしていた。
「気が狂いそう。」
ふぅとため息をついていると、不躾に障子を開けられ、啓明がやってきた。
「五条悟は禪院家傘下の家のものと結婚するそうだぞ。」
「…。」
何も挨拶もないまま急にそう告げられ私はふいっと外を見た。
「禪院家に従っておいてよかったなぁ。御三家なら断然力があるのは禪院家だ。従っていれさえすれば、こうやっていい血の女が与えられる。」
どかどか部屋に入って来て、私の前に座った。
ひょっと背が高く、本当に下品な人だ。
「が五条悟と恋仲というのは本当か?」
「……。」
私は何も言わなかった。
話したくもない。
「くくっ!五条悟から女を奪って目の前で婚姻するとか傑作じゃないか!禪院家の条件を聞いたか?」
ーー…聞いてるわけがない。ここから出ていないのに。
「、お前を取り返したければ、五条悟は禪院家の手の者と結婚しなければならない。最高だな!どうあがいてもお前たちは結ばれないっ!」
手を叩いて笑う男を私は震えて見上げた。