第11章 二人の絆
綺麗に纏めた髪なのに、横のこめかみ辺りをガシッと鷲掴みされた。
「…っ。」
「いいな。大人しくしてろ。おい!誰か!」
「はい、啓明さま。」
障子が開けられ、先程私を案内してくれた女中がやってきた。
「この女を部屋に入れておけ。」
がっと床に押し付けられ、私はよろめき倒れた。
髪の毛はぐちゃぐちゃだ。
「それと、結界は毎日作り変えろ。何重にもするように。入り口は1時間に一回は変えるんだいいな。そうでもしないと、突破されるからな。」
「はい。かしこまりました。」
女中さんに手を添えられ、私は立ち上がると黙って部屋を後にした。
8畳くらいの畳のみの部屋に入れられ、私は座り込んだ。
「食事は後ほどお持ちします。」
女中さんはそれだけ言うと障子をしめた。
結界できっと開けられないとわかった。
「…いた。」
左手が痛み、私は着物をまくった。
“どこ”
悟さんからのメッセージだ。
私は小さな窓を見た。
景色がさっきと変わってる。
きっと移動してるんだ。この家にかけられた術式かなにかなのかもしれない。
ーー…どこかわからない。
私は“お屋敷”とだけ返しておいた。
『外部と連絡をとったら…』
あの狂った目。
きっと五条悟を殺すために私の心臓を躊躇いなく潰すだろう。
私は詳しく腕に書くのを辞めておいた。バレたら何をされるかわからない。
しばらくすると、また痛み出した腕には“ばかばかばかばか”と書いてあった。
ーー…書けないんだよ、悟さん。
でも、離れていてもどこか繋がってる気がして私は腕の文字をそっと撫でた。
悟さんのお母様は私を騙したのだろうか。
それとも啓明に私を連れてくるようお母様も騙されたのだろうか。