第11章 二人の絆
「そういえば五条家の当主じゃん。僕。」
「…そうだね。」
今気付いたのか、と夏油は呆れた声で言った。
「今利用しないでどうすんの。」
立ち上がって部屋の外に向かって声をかけた。
「お呼びですか、ご当主様。」
すぐに和装の男性がやって来て部屋の扉の前に立ち、五条に頭を下げた。
「御三家へ連絡いれる。筆と用紙を。あと、会議用の服用意しといて。」
「かしこまりました。」
さっと下がって行った男性を横目に、夏油は心配そうにしていた。
「何するつもりなんだ?」
「御前試合。」
「…御前試合って。やっぱり戦って奪い取るつもりか。悟相手に向こうが受けるとは思わないけどな。」
悟に勝てるわけがない。と、夏油は首を振った。
「違う違う。御前試合っていっても天皇や将軍の前でやるわけじゃないんだから、当主の前でやるんだよ。」
「…。」
眉を寄せ、首を傾げる夏油に対して、五条はにやにやと笑っていた。
御前試合といえば、天皇や時の権力者とかの前で見せる試合のことだ。
それを現代で行おうと五条はしていた。
それを御前…当主である五条の前で戦えと、五条は言ったのだ。
「うちから多治家に御前試合をふっかける。立場的に向こうは五条家からの言葉は聞かなきゃいけないしな。ちゃんと正式に文書を出して形式にのっとってやれば、逃げられない。」
顎に手をやり、悪巧みをしている五条に、夏油もくすりと笑った。
「しかし禪院家が黙ってるか?」
「そこは条件をつけるのさ。五条家が勝てば浄化の巫女をもらう。多治家が勝てば僕は知らん女でもなんでも結婚してやる。禪院家はのってくるさ。」
「悟の前で試合をするってことは誰が戦うんだ。そんな責任重大な試合。…まさか私に頼もうとしてるのか?」
「いや?」
五条はさらに笑みを浮かべた。
「を気に入ってるもう一人の最強がいるじゃないか。」