第11章 二人の絆
【五条side】
五条は次の日、自分の部屋の机に座りイライラとしていた。
机に置かれた文書をそのままに、指でずっとトントンと机を叩いていた。
「はなんて?」
「何も。見て。」
五条は左手の袖をまくった。
“ばかばかばかばかばかばかばか”といくつか続いていた。
「何それ。」
「からの返信。」
「…何してんのキミら。」
「ばかって送ったらばかばかって返って来たから、ばかばかばかって返した。」
「…いやだから何してんの。」
その度にペンで自分を血が出るほど書いてるのかと想像したら、夏油は二人のことを本当に馬鹿だなと思った。
「となると、はそんなに酷い扱いは受けてないのか?」
「そんな酷いことはされてないとは思うけど、なんか上手い口車に乗せられて騙されてそう。術師のことは基本信じてるんじゃないか?」
「あー。確かに。」
夏油は苦笑した。
「しかし、今はどこにいるんだ?」
「わからないんだよ。巧妙に隠されてる。なんか結界が何かの中にいるのか。の呪力が探れない。」
「その腕で聞けばいいだろ。」
“ばか”などと言い合う前にに聞けばいいのに。と夏油は突っ込んだ。
「聞いたさ。そしたら“お屋敷”としか返って来なかった。ばかだろ。」
きっともどこかわかってないんだろう。
どこかの屋敷にきっと閉じ込められているに違いない。
「だからまた“ばか”って返しといた。」
「さすがにの腕が限界かもな。」
赤く血が滲む腕を治す人はの近くにはいないだろう。
痛みに弱い非術師のには増えていくキズにうっすらと涙を浮かべてるかもしれない。
「それで、その文書は?」
夏油は五条の机の上に広げられた用紙を手に取った。
「なんでこれ見て二人で“ばかばか”言い合ってられるんだ、悟。」
「はぁーーー。」
文書を読んだ夏油は驚いて五条を見た。
大きなため息。
「“現代最期の浄化の巫女と多治の当主が一週間後に籍を入れる”ってあるじゃないか。」
「……。」
「じゃあ…向こうの要求は?」