第11章 二人の絆
お母様に黒のセダンの後ろに乗せられ、連れてこられたのはこれまた大きなお屋敷だった。
「ここから結界が張られてますから、安心してくださいね。」
「はい…ありがとうございます。」
私が狙われていることもよく知っているようだった。
五条家ほとではないが、立派なお屋敷。
そこに足を踏み入れた私はずんっと身体が重くなる感覚になった。
「ごめんなさいね。さんの気配を消す強い結界をしてるから、少し重く感じるかもしれませんが、すぐに体も慣れますよ。」
「はい。」
私を隠すため用意してくれたのだろう。
「多治家当主の啓明“けいめい”さんに会いましょう。服を着替えますよ。」
服をわざわざ着替えるの?と、驚きつつ私はお母様の後ろに続いた。
すると、急に痛み出した左手。
「…?」
私は自分の左手の腕の内側を見た。
“ばーか”
「…はぁ!?」
「どうしましたか?」
「あ、いえ、なんでも。」
私はさっと自分の腕を隠した。
「…悟さん?」
聞こえなよう小さく呟いた。
なんで“ばか”?
悟さんに相談せず養子にはいるから?
結婚はできないけどそばにいてもいいって言われたら、そっちを選ぶのは仕方ないじゃないか。
しかも言われたのは貴方のお母様だし…!
あとで“おまえがばか”とでも返してやろうかと思いつつ、私は悟さんにつけられた傷をひとなでして、お母様の後ろについて行った。
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お手伝いさんなのかわからない女性たちにあれよあれよと着させられた着物。
こんなの成人式以来だ。
あの時は振袖だったからちょっと違うけど、生地とかはとても上等なものに感じた。
髪の毛も後ろに綺麗に纏められ、きちっと固められている。
ーー…お嬢様みたいだ。
「これで少しは見れますね。」
お母様だから私は何も言わないけれど、ちょいちょい棘がある言い方に、私は気に入られてはないのだなと、少し悲しかった。