第11章 二人の絆
私は座って背筋を伸ばした。
「はい…よくしていただいてます。ご挨拶が遅れすみません。」
私は軽く頭を下げた。
「いいのよ。悟は昔から何も私には言わないから。」
「そうですか…。」
「女性遊びが激しくっても放任していた私たちが悪いのかしらねぇ。」
ーー…女性遊び。
きっとお母様も私のことをそのうちの一人くらいにしか思っていないのだろう。
「でもあの子もそろそろ30代になるでしょう?五条家の人間として跡継ぎを考えなくてはなりません。」
「…はい。」
「さんには申し訳ないのだけれど、浄化の血を五条家にいれるわけにはいきません。」
「……。」
私はお母様から目を逸らし、自分の膝を見つめた。
「しかし、あなた達の仲を引き裂きたいわけでもありません。」
「…はい。」
「さん。多治家の養子に入りませんか?」
私は顔を上げ、お母様をみた。
にっこりと優しい笑顔だった。
「多治家は五条家の傘下にいる家柄です。そこの養子になって、悟を支えてくれないかしら。…跡継ぎを産ませるわけにはいかないのだけれど、そばにはいれますよ?」
「…もし、断ったら…?」
私は恐る恐る聞いてみた。すると、とたん真顔になるお母様。
「貴方たちの呪いが解けしたい、五条家に近づく事を禁じます。今後一切悟には会わせるわけにはいきません。」
ぴしゃりと厳しい言い方に私はぐっと口を結んだ。
ーー…そばにはいたい。
五条家のアレコレは私にはわからない。
血筋のことや、結婚、跡継ぎのことなんて、考えてなかった私はただ悟さんのそばにいたかっただけだ。
でも、昔から続く正統な御三家を守るためならきっと私は、お母様からしたら邪魔なものなんだろう。
それでもお母様は、そばにはいていいと言ってくれた。
「多治家の養子に…入ります。」
「それじゃあ早速、多治のおうちに行きましょう?」
「え?もうですか?悟さんに一度相談を…」
「近いうちに御三家で挨拶あるから大丈夫ですよ。ほら。」
私はお母様に腕を取られ、あれよこれよと連れて行かれたのだった。