第11章 二人の絆
【side】
悟さんに屋敷の前まで送ってもらって、私は屋敷に入った。
もう最近になると女中さんたちは私を見て見ぬふりをしてくれている。恐らく悟さんがそう指示したんだろうけれど。
神奈川から仙台、そして岡山。
長かった…。
結局これだけの旅をしたというのに、色々話を聞きたかった大叔母が亡くなってしまっていたから、収穫といえば指輪くらいだ。
この指輪も対となっているもう一つの石がないと意味がないものだ。
「ふぅ…」
さすがに疲れたな。と、私は自分の部屋の扉を開けた。
「おかえりなさい、さん。」
ソファには着物を着た女性が座っていた。
「…えっと…帰りました?」
「いきなりでごめんなさいね。」
「いえっ!」
誰だろう。
私の知らない人だ。上品で綺麗な50代くらいの女性が私に向かって微笑んでいた。
「どうぞ、おかけになって?」
「はいっ。」
凛とした女性は私を緊張させた。
「五条悟の母です。」
「はっ…は!?」
ふわっと微笑む女性は黒髪で、着物がよく似合う人だったーー…。
「悟がお世話になっております。」
私は立ち上がった。
「いえ!こちらこそ!むしろこちらがお世話になっております!」
あわわっと、うまく話せない。
どうしよう、悟さんのお母様だ!
どこまで話せばいいんだろう!
お付き合いさせていただいてます!って言わない方がいいのかな!
頭の中でぐるぐるぐるぐる思考を巡らせるが、まとまらない。
「悟と、交際をしているようですね。」
「…っ!」
知ってる!え、悟さんが話したのかな!
と、何も言わずにいると、立ったままの私をチラリと見上げて来たので、私は静かに腰を下ろした。