第11章 二人の絆
久しぶりにみるマジギレな五条の様子に、夏油は立ち上がった。
「どうした。」
「クソジジイども…!」
そういうのは、上の連中の事だ。すぐに夏油は理解した。
「何があった。」
「ちょっと待って。」
五条はすぐに電話をかけ始めた。
何度かコールを鳴らすが、相手は出る様子がない。
「屋敷にいれば大丈夫だと思ったんだが…」
結局電話を出ることなく、五条は電話を切った。
「…もしかしてか?」
「あぁ。上に連れてかれた。」
五条はスマホの画面を夏油に見せた。
【この度、多治啓明(たじけいめい)が挙式を挙げることが決まりましたので、お知らせいたします。御三家当主の皆々様におかれましては、後日お集まりいただきご挨拶差し上げたく存じ上げます。】
などなど、堅苦しい文面がつらつらと綴られていた。
「文書でなくメールとか舐めてんだろ。どんだけ急いで送って来てんだ。」
「まて、は?ついさっきだろ?分かれたの。」
「あぁ。全部準備されてたんだろ。」
「でもこれでは多治家がと結婚するなんてわからないんじゃないのかい?」
「わざわざ送ってくるくらいだ、のことだと分かりきってる。」
イライラしてる五条に、夏油は眉を寄せた。
「多治って確か…」
「あぁ、禪院家の傘下の家だ。僕に対する嫌がらせか、いや…人質。何か要求してくるかもな。」
ソファにどかっと座る五条は、どうするべき考えた。
「もぅ、全部殺しちゃう?いっちゃう?やっちゃっていいかな。」
「辞めとけ。」
「ていうか、もなんでついてくかなー。あ、そうだ。」
五条はペンを取り出し、腕の内側に強く当て字を書き始めた。
“ばーか”
血が滲むほど強く一言そう書いて、くくっと笑う五条であった。