第11章 二人の絆
しばらく坂道を登って歩いていると、畑に作業着をきたお爺さんがいるようだった。
「あの人に聞いてみようか。」
「あぁ。」
私は駆け足で、畑のあぜ道に向かった。
「すみませーん!」
話しかけると、お爺さんは鎌を持ったまま顔を上げた。
草刈りをしていたようだ。
「東京からきたものなんですが、親戚の“千歳”さんって方を探してまして。私の大叔母に当たる人なんです。ご存知ありませんか?」
「…ちとせ。」
お爺さんは目を丸くした。
変なものを見るかのように私と悟さんをみていた。
「おまえさん、千歳さんとこの親戚か。」
「はい。祖母にここにいるはずと聞いて来たんですが…住所がわからなくて。」
「千歳さんは、死んだよ。」
私は思いもよらない返事を聞いて、横の悟さんを見上げた。
悟さんも驚いていて、まさか亡くなってるとは思わなかったようだ。
鎌を下に置き、お爺さんは私たちの所に来てくれた。
「つい最近じゃあ。一週間くらい前で、親戚がだれもおらんと思っとったけん、ワシら村のもんで弔ってやったんじゃ。」
一週間前…?本当に最近だ。
「家ぇ、見てくか?」
お爺さんに提案され、私はゆっくり頷いた。
■□■□■□
小さな平屋の一人で暮らすための家だった。
こじんまりとしていたけど、なんとなく暖かい場所だ。
「…の呪力に似てる。」
後ろでぽそっと悟さんが呟いた。
「好きに見ていくとええ。千歳さんは優しい、暖かい人だった。なんとなくあんたと似とるよ。若い頃は神社に巫女として働いて、ここで、最後みんなと過ごすんだと、よぉ笑っとった。」
ーー…?
「みんな?」
「さあ、巫女さんだから何か彼女にしか見えないものがあったのかもしれんのぉ。」
不思議な人じゃった。と、お爺さんは畑の方へと帰って行った。