第11章 二人の絆
仙台の時と同じように、駅に着いてからはタクシーを利用した。
岡山駅からは阿曽もそんなに遠くなく、市街地を抜けるともう山々が並ぶ田舎になってきていた。
「東京以外は本当自然豊かな場所だよねー。」
私はタクシーの窓から覗きながら言った。
「お客さん、観光?」
「親戚のおうちに行きたいです。」
タクシーの運転手さんに聞かれて、私は正直に話した。
「阿曽のどの辺?」
「それがわからなくて…探してるんです。」
「あそこは民家はだいぶん減ってきとるからねぇ。郵便局か農協の人に聞いたらしっとるんじゃないかい?」
田舎らしい優しい運転手さんだった。
個人情報がばがばではあるけれど、そこがまた田舎らしい。
「あそこは今通ったきた神社の巫女さんを輩出する地区だから、血筋に厳しいと聞くねぇ。しかしそのせいで人が減ってしまったらしいけど。」
「へぇ。巫女さんを…」
私はふわっと返事をした。
「鬼の窯があったり、鬼の城があったり、歴史深い場所ではあるけど、いかんせん人が少ないのぉ。」
人が少ないのは、私達にとっては好都合だった。
名前だけで探しやすそうだと思った。
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私たちはタクシーを降りて周りを見渡した。
本当に民家が少ない。
「一応、ここが阿曽ではあるけれど、農協さんに行くなら少し山を下らんとおえん。どうする?」
「いえ、ここでいいです。名前は知ってるから聞いてみます。」
「民家は少ねぇゆーても、広いけん周りに聞くとええ。」
「はい、ありがとうございます。」
タクシーの運転手さんは私たちに手を振り帰っていった。
「岡山弁、可愛いねぇ。」
くすくす笑う悟さんにつられて、私も微笑んだ。
「優しい人だったね。…にしても、人いないねぇ。」
日中は誰も外に出ないのか、人が見当たらない。
たまに石碑がたってあって、“鬼”の文字や“吉備”などと書かれている。
「桃太郎伝説の言い伝え、本当にあるんだね。」
石碑を眺めながら悟さんが言った。