第11章 二人の絆
いてぇよーと、くすんっと泣いてる虎杖くんに私は笑みが溢れた。
悟さんのことだから、私が落ち込まないように、面白おかしくしてくれてるような、そんな気がした。
「悟さん…ありがとう。でも、仙台からどうやってここまできたの…?」
「……ぎゅっとして飛んだ。」
適当すぎる。
悟さんの無下限が関係してるのだろうか。
虚数もわからない私には、説明しても無駄だと思ったのかもしれない。
「悠仁。」
「何?」
タオルで擦られて真っ赤になった顔と手の虎杖くんが、悟さんの真剣な声に応えた。
「今回宿儺に主導権が変わったのは何故だ。」
「ごめん…いつも通り任務こなしてたんだけど、急に特級が襲ってきて、伊地知さんに言われて撤退しようとしてたんだ。でも子供人質に取られてさ、助けようとしたら両脚をやられちゃって。気を失って、中の宿儺が、子供を助けて俺の足も治してやるから30分だけ変われって。」
「その時宿儺がその30分で何をするか聞かなかったのか?」
「聞いたよ!宿儺は“誰も傷は付けない。30分酒が飲みたいだけだ”って。俺の部屋からも出ないからって。」
「…そうか。」
私を酒のようだ。と言っていた宿儺だ。確かに嘘はついてない。
「なんか…あったのか?俺なんかやっぱりしたか…?」
「いや、足が治ってよかった。悪いが部屋を今日は変わってもらってくれ。」
「わかった。」
窓ガラスが散乱した部屋のままじゃ眠れやしない。
悟さんに言われた虎杖くんは、ばたばたと部屋から出ていった。
「たくさん。聞かなきゃ行けないことあるな。」
悟さんは言った。
私はもう一度悟さんの腰に手を回すと、彼を見上げた。
「とりあえず、上書きして欲しい。いい?」
「…ん。」
ふわっと柔らかい口付けは、宿儺の時は全然違った。
たった一瞬触れるだけのキスでも、心満たされる。
悟さんの匂い。
悟さんの体温。
「…悟さんだけがいい。」
私は小さく呟いた。