第2章 二人はずっと一緒
「ごっ…じょ…さん!離してくださいっ…」
そう言っても、五条さんは私の顔と心臓を見たいのか、裸なんか気にもせずその目で見つめていた。
「寝ていたら、急に僕の心臓が高鳴ったんだ。何があった。」
「なにも!!…何もないですっ!お風呂入ってただけです!」
だから離せと訴えると、五条さんの私の肩を掴む手の力が弱まった。
慌ててバタタオルを引っ掴み、私は自分の前を隠した。
自分の心臓を掴む五条さん。
眉を寄せ、不思議そうにしている。
逆に私の心臓は依然静かなままだった。
「こんなにドキドキしてるのに…?何か襲われたのかと思った…。」
「それは、急に男性に裸見られたらドキドキしますよ!」
「それより前だよ。」
ーーー…五条さんのことを考えてた時だ。
「ほらまた。さらに強くなった。」
「や!やめてくださいっ!もう、勝手にドキドキしちゃうんです!早く出てください!」
「あっ…。」
心臓を通して思考を読まれてるようで私は声を荒げた。
五条さんはやっと私に背を向けた。
「ほんっとーに、何もない?病気とか、何か変なこと起きたりとか。」
「ありません!ちょっと長湯をしてしまって、のぼせちゃっただけだと思います!」
「こんなにドキドキするものなの?」
「そりゃ…。」
一応女である私の裸をみたくせに、まったく動きの変わらない、私の中の心臓。
彼はドキドキすることなんてないのだろうか。
「走ったり、タイプの女性見たり、びっくりするとドキドキするんじゃないんですか?」
「うーーん。あんまりないかなぁ。」
私に背を向けたまま、首を傾げる五条さんに私は口をあんぐりあけ彼の背を見つめた。
「私は…普通にドキドキしちゃうんで、その…気にしないでください。今回も何もないし、映画とかみてドキドキすることもあるので…。」
その度に彼に筒抜けなのはいささか恥ずかしいが、この際仕方ない。
「寝てたのにすみません…。その…着替えたいので…」
出ていって欲しい。
そう伝えると、ごめんねって言いながら彼は再び自室へと戻っていった。