第10章 二人で仙台
余韻に浸っているのか、宿儺はあまりその後呪霊について語ろうとしなかった。
「あれだけのことしたんだから、もう少しちゃんと話してほしいよ…」
ぶつぶつ文句を言いながら、身を整えていると宿儺がまた笑い出した。
「ねぇ、ついになってる石ってどんなの?」
『知らぬ。俺が見たのは1000年前だが、貴様の母を殺した呪霊がひとつは阿曽にあるとだけ言っていた。』
「…え?」
もう暇つぶしは終わった様子で、くわっとあくびをしながら宿儺はとんでもないことを言った。
「母を…殺した?」
『言っただろう、貴様をずっと喰らおうと狙っていると。』
ーー…母は車の事故じゃなくて、私を狙う呪霊に殺されたの?
私がショックで、ベッドに座っていると、横に腰掛けてきた宿儺が私の後頭部に手を回し、涙の跡をまたペロリと舐めた。
「…っ」
あまりに優しい手つきに私は驚いて彼の胸を押した。
優しくされると困る。
そんな優しい目で見られると、どうしたらいいのかわからなくなる。
宿儺はずっと酷くて最悪で邪悪で帝王のようなやつでないと…。
「宿儺は…もしかして、昔阿曽巫女と恋人だったの?」
私の言葉に眉がピクと動いた。
とたん、後頭部にあった手が私の髪の毛を掴み後ろに引っ張った。
『馬鹿なことを。殺すぞ。』
「ご、ごめ…いたた!」
これでもかって後ろに引っ張られ首がちぎれそうだ。
『昔も今も、玩具だ。自惚れるな。』
「…すみません。」
ぱっと髪の毛を離され、私は首の後ろをさすった。
「そういえばさっき、傷は治せるってさらって言ってたけど、宿儺は他人の傷を治せるの?」
『ふんっ。』
返事は鼻で笑うだけだった。
そんなことは簡単だとでも言いたいのだろうか。
本当に会話ができない人だ。
『…小僧が起きたな。』
「え?」
段々と顔の模様が薄くなっていく宿儺に私は手を伸ばした。
「待って!!」
私は思いっきり自分の唇を噛んだ。
血が滲む。
そして、宿儺の顔を掴むとその部分を彼の口に押し付けた。
「私の血をあげたわ!対価よ!次何かあったら助けなさい!」
『なっ…小娘っ!』
「やられっぱなしはムカつくの!いい!?これは契約よ!!」
宿儺は私を睨みながら、目を閉じた。