第10章 二人で仙台
唇から血が流れるのを私は手の甲でぐいっと拭いた。
“契約”なんていったけれど、私からしたらただの口約束だ。しかも一方的な。
宿儺が聞いてくれるとは思えないけど、言ってやらないと気が済まなかった。
「うぉっ!!」
目の前いた虎杖くんが、私に気づいて声を上げた。
「おかえり…虎杖くん。」
「さんっ!?あれ!?ここ俺の部屋…」
慌てふためいている虎杖くんは、自分の足を触り始めた。
「あ、治ってる!」
足が潰れたと、宿儺は言っていた。
それを治す代わりに主導権を30分だけ明け渡したって。
「…よかった。足が治って。」
「さん、何で…ここ?五条先生は?もしかして、宿儺とさんが話してたの?」
虎杖くんの明るく優しい雰囲気に、私は急に力が抜けて、ベッドに座った。
「おっと、さん?大丈夫!?」
ふらつく私を心配してくれる虎杖くんに、私は少し落ち着いた。
「うん…ごめんーー…」
色々頭で考えてるうちに、パンクしそうになっては目頭を抑えた。
ーー…泣きそう。でも、ダメ。ここで泣いたら虎杖くんが責任を感じてしまう。
「…さん?」
虎杖くんも私の横に座って心配そうに私の顔を覗き込んだ、その瞬間だった。
ガッシャーーーンッ!
と、ベッドの後ろの窓ガラスを悟さんが足蹴りで割り、入り込んできた。
「ぎゃーーー!」
叫んだのは虎杖くん。
「っ!……悠仁?オマエ何してんの?」
悟さんはベッドで二人座ってる私達を窓枠に足をかけ、見下ろした。