第9章 二人で切り抜けろ
「待て!聞いてくれって!私達の思いを!」
「知らない。取り下げたらすぐに殺さない…あとで殺す。」
結局死ぬやつじゃん!
「そこの女性を神として世界を作り変えたいのだ!」
「…へ?」
今度は私が声をあげてしまった。
男は気にせず話を勝手に続けた。
「浄化は呪霊を消すのだろう?日々、呪霊に悩む人間が居なくなる最高の力ではないか!その彼女は特別なんだ!」
力説され、なんとなくむず痒かった。
そんな特別だと思ったことはない。
消せると言っても小さく弱い、しかも限定的な呪霊だけだ。
「その力を増やすべきだ!彼女を中心とし、子をたくさん孕み、浄化の力を持つ子孫を増やすべきだ!優秀な男を何人か選りすぐり、その男たちとの子を最低でも十人は…!」
「死ね。」
悟さんは普通にグーで男の頬を殴った。
「な、何故だ!呪霊を憎くはないのか!」
と、叫ぶ男の頭に悟さんはさらに踵落としをお見舞いしていた。
「あー、やだやだキモい。変な思想の奴らまで湧いてきちゃってんじゃん。」
「…子供作らそうとしたの?」
ぞっとして、私は悟さんに抱えられたままブルっと震えた。
鼻血を垂らし、白いスーツを赤く染めていく男は、なぜわからない!と叫んでいた。
「彼女は呪霊のない世界を作ることができるかもしれないのに!」
「人がいる限り、呪霊は生まれる。それは変わらない。」
悟さんは私を立ち上がらせ、肩を抱いた。
「、見たくないなら目、閉じてて。」
私の顔を胸に押さえ、視界を無くした。
私は手を押して顔を出し、首を振った。
「大丈夫。全部見るよ。私のことだもの。悟さんの見てる世界を…私も見る。」