第8章 二人で一緒に
漫画のようにわんわん泣く私に、悟さんはベッドに座って私を抱えるように顔を覗き込んだ。
「どうした?なに?」
「どうせこの涙も美味しいんでしょ!飲めばいいじゃん!ばか!」
「は?涙?、落ち着けって。」
「悟さんは別に私の事好きじゃなかったんだ!」
「はぁ!?」
「私の横が心地いいのは浄化な力があるからでしょ!?私の血があるから、キスしたくなるんでしょ!?」
ぱこぱこと悟さんの膝や肩を叩きながら言うと、悟さんは少し眉を寄せ怖い顔になった。
「宿儺だな?」
低い声に私は殴る手を止めた。
「だって、宿儺が私……っもが」
下唇が動かなくなり私はそれ以上話せなかった。
宿儺にされた契約だ。
「話せないんだな?いい。わかるから。」
はーーっと大きなため息をついて、悟さんは私の両肩を掴んだ。
「宿儺の対価が大体わかった。」
私は気まずくなって黙り込んだ。
「その心臓の音でさらに確信した。は本当に心臓がわかりやすい。あの時は舌に傷ができた。宿儺にキスされたのか?」
私は何も言えなかった。
「そうか。の唾液に何かあるんだな?」
契約上何も言えないから、私はずっと口を閉じたまま瞬きだけを繰り返した。
「本当は血が欲しいけど、傷付けると僕がすぐくるから血の代わりに唾液を要求したんだな。阿曽巫女の子孫だから。」
ずばずば言い当てていく悟さんに私は頷きたかった。もちろんそれもできなかったけれど。
「それで、なんで僕ともキスしたくないんだ。」
「…だって、悟さんも美味いって言った。」
「…え?僕が?」
「うん。だいぶん前に。」