第8章 二人で一緒に
あまりに急に言われて私は口を開け、後ろを振り向いた。
サングラスを外した悟さんがのそっと私のベッドに上がってきた。
「あっ…え?…」
真剣な表情に私は固まってしまった。
私はベッドに座っていたが、悟さんはその膝に顔から埋まるように頭を下ろした。
「わっ…えぇっ」
太ももに顔を埋めて『すぅぅぅーー』っと吸い込んでいる。
「やっ…そ、それはっ!」
恥ずかしくて死にそう。
「あー、ホテルの匂いしかしない…。」
ホテルの部屋着だからそれはそうだろう。
それでも悟さんは私の太ももに顔を埋めてじっとしていた。
「あぁ、癒される。」
「…。」
「気疲れか…あんま気にしたことなかったな。」
独り言のように言う悟さんの頭に、私はそっと触れた。
ふわふわの綺麗な髪の毛だ。
「…元気になーれ。」
子供を撫でるようによしよしとすると、私の腰に手を回し少し強く抱きしめてきた。
「……。嫌?」
「えっ?」
「今ならまだギリギリ間に合う。が本当に嫌なら…。」
私は触れていた頭をパッと離した。
ドッドッとかなり強く心臓がなっている。
悟さんの心臓がーー…
「あんまり我慢出来ないって言っただろ。」
私の太ももからやっと顔を上げた悟さんは私の頬に手を伸ばした。
「悟さん…心臓が…」
「あぁ。わかってるよ。でも、止められない。」
こんなに強くあなたの心臓が高鳴るのは…私に対して…?
ーー…そう自惚れてもいいの?
また少し悟さんが私に近づいてきた。
私の頬に触れてる手が頬から耳の辺りを撫でている。
「…。」
私はぎゅっと目を閉じた。
貴方の私への気持ちが錯覚なのだとしたら…
それでも、私はそれ以上に貴方がーーー…