第8章 二人で一緒に
私は手帳の住所の箇所をスマホで写真を撮ると、自分の部屋から出て行こうとした。
「待って。」
「…っ。」
悟さんに手首を掴まれ、私はぐっと力が入った。
絶対心臓はバクバクいってて、それは悟さんに伝わってるはずだ。
私はチラッと一瞬だけ、後ろの悟さんに視線を向けた。
じっと真剣な目がこちらを見ていて、私はすぐに視線を逸らした。
「……。」
掴まれた手首が熱い。
「話してはくれないの?」
「な…何を?」
私は手を離してもらおうと手を引っ張った。
…びくともしない。
「ふーん、とぼけるんだ。」
悟さんは私の手を引き、壁に押し付けた。
「…っ」
大きな身体が壁にみたい私を追い詰めた。
「…なんだろな。」
悟さんが私の頭の上でポツリと呟いて、私を見下ろした。
「今までの女だったら、去るもの追わずで別に気にもしなかったけど。」
「……」
手首を壁に押し付けられ、逃げられないようにされている。
「はダメ。全部知りたい。何抱えてんの。」
「…べ、別に……」
「嘘。避けてる。」
目が合わせられない。
合わせたら泣いてしまいそう。
ここの空気や残されていた私の呪力のせいで“私の横がいい”。と錯覚しているのかもしれない。
私はやっぱり、宿儺と悟さんにキスされた時に言われた“美味い”って言葉が頭から離れない。
そのことに悟さんが気づいた時…なんて言われるか怖くて聞けない。
「…。」
「さ…悟さん。ほら、遅くなるから、早く行こう?」
これから長い移動になるのに、空気は悪くしたくない。
私は目を合わせず、それでも必死で笑みを浮かべながらそう明るく言った。
「僕もーー…」
そう言って悟さんは私の顎を指ですくい、目を合わせた。
「あんまり我慢できないからね。」
悟さんは私から離れると、部屋をでて階段を降りていった。