第8章 二人で一緒に
「で?何考えてたの?」
「え?」
もごもごとクレープを食べながら悟さんは言った。
サービスエリアの駐車場。
端っこの方に停めたから周りにはドッグラン利用客くらいしかいない。
「難しい顔してたから。ま、あんだけのこと聞かされたらわからなくはないけど。」
「いや…わたしなーんにもできないなーって思って。」
「そりゃそうでしょ。」
ずばっと言われ私は口を閉じた。
わかってるもん。
『お前には浄化があるよ。』とか?
なんか、別に励ましてほしかったわけじゃないし?
「は非術師で、生まれたての子鹿並みの筋力じゃん。」
私は腕立てした時のぷるぷる震える自分を思い出した。
「…子鹿。」
「子鹿の方がまだ早く走れるんじゃない?」
「ぐっ。」
ぐさっ
クレープ片手にぐさぐさ言う男を見た。
確かに学生時代は50メートル走は8秒くらいのど平均で、運動しなくなって社会人の今やきっと9秒…いや10秒近いだろう。
「を守ろうとした呪霊は、よくもまぁ僕を選んだよね。」
「…ごめんよ。」
口の中がいちごの酸味でいっぱいになった。
「僕じゃなきゃ無理だよー?を守りながら戦うなんて。」
「…。」
「むしろ僕しか出来ないね。頭いい呪霊だよ、低級のくせに。」
「そんなすごいんですね。五条悟大先生は。」
自分をあげまくる悟さんに私は笑いながら言った。
「あったり前だろ?いっただろ。僕最強なの。」
にまっと得意気に笑う悟さんの口の端には、生クリームが付いていて、私はぷっと吹いてしまった。
「何、そんなに笑って。」
「ふふっ、決め台詞が台無し。」
私はティッシュを取り出してそっと生クリームを取ってあげた。
「可愛いですね。悟さんは。」
「かっこいいの間違いだろ。」
悟さんは拗ねたように言いながら、最後にクレープの下の部分をポイっと口に放り込んだ。
私はまだ半分の残ってるクレープに慌てて齧り付いた。
「まぁそう言うことだから、が無力で非力で役立たずでも何とかなるから。僕が守ってあげるからね。」
ぽんっと撫でられ、私は照れ臭くてクレープを黙って食べ続けた。