第8章 二人で一緒に
神奈川の少し大きめなサービスエリアに私たちはいた。
あんなことを話したあとだから私は車から出る勇気がなくて、車の外で電話をしている悟さんを車の中から眺めていた。
「はぁ…」
無意識にため息が出る。
こんな無力な私は悟さんにとって足手まといでしかない。
逃げろっ言われても、走ることぐらいしかできないし、戦うなんてもってのほか。
全員を浄化出来るわけでもない。
呪詛師や術師がもし私の目の前にきても、もちろんなす術なし。
「阿曽のおばちゃんに会って、何かもっと浄化のことがわかれば、力がつくかな…」
「どーしたの、難しい顔して。」
運転席が開けられ、悟さんが入ってきた。
「ん。」
差し出されたクレープ。
「あ、ありがとう。」
「勝手にいちごチョコにしたけど、よかった?」
手渡されたクレープを見つめた。
甘い香りが車内に充満して、なんだかほっとした。
「うん。おいしそう。ありがとう。」
生クリームにチョコソースがかかり、真っ赤なイチゴが生地からのぞいていた。
「サービスエリアといえばクレープっしょ。」
悟さんの手元にもクレープ。
しかし私のよりかなり大きくて、アイスやらバナナ,イチゴ、カスタードにと、盛り盛りにしてあった。
「初めて聞いたんだけど。」
だって、ここのクレープは普通にチェーン店のクレープでどこでも食べられるやつだ。
ただ悟さんが食べたかったから買ったに違いない。
ふふって笑いながらてっぺんにあるイチゴに齧り付いた。
「頭使ったら甘いもんよ。」
私の部屋に入り浸ってるときもクッキーやらチョコを食べてたから、きっと甘いものが好きなんだろう。
大きな口でクレープを頬張る姿がなんだか可愛く見えた。